別れたりくっついたりの学パロアルアサ
昨日、アルフレッドと別れた。

原因?そんなの、とてもひとつには絞れねぇよ。アルフレッドによる諸所諸々の自分勝手が積み重なって、温厚さがウリである俺の堪忍袋の緒が、とうとうブチンとぶっちぎれた。それがたまたま、昨日だったって話だ。遅かれ早かれ、いずれこうなるだろうってことは、最初っから判ってたんだ。

今年の学内のクリスマスパーティーは、ヒーロー部が主催することになった。開催まで1週間を切り、最近のあいつはいつもに増して目まぐるしく忙しい。イベント開催に予算を与えた生徒会長であるこの俺も、その内情をよく知っている。だがしかし、だ。忙しいからといって、礼儀を欠いてもいい道理なんかあるか?いやない、そうだろう?
一方的にしゃべくられた電話の後、むしゃくしゃした俺は、流れるように洗練された、ご自慢の紳士の所作で、緑のアイコンのチャットアプリに「俺たちもう終わりにしようぜ」と、華麗に送信してやった。別に機嫌が悪かったとか、衝動的にやっちまったとか、そういうわけじゃ断じてない。

その後、朝になっても、あいつからの返信はなかった。


・・・・・・。
早まったな、なんて後悔、全然まったく!してないんだからな!
思えば、俺に好きだと告げて、強引にこの関係を始めたのもあいつからだった。あれよあれよと言う間に恋人宣言。なんだかんだと絆され、気づけばアルフレッドと過ごす放課後や休日が、俺の日常になっていた。あいつはいつだって唐突で、自分のしたいようにやるんだ。俺の気持ちなんかちっとも思いやってくれないし、自分の欲求を曲げないし、結局は俺が合わせてやるしかなくなる。今にしてみれば、俺の、アルフレッドを好きだという気持ちを、いい様に利用されてたんじゃねぇかとさえ思う。

でも、それももう終わりだ。
アルフレッドから返信はこない。あいつは別れを受け入れたというわけだ。

「あー、清々した」
放課後、一人きりの生徒会室で、お気に入りの茶器を使って丁寧に紅茶をいれた。
「俺は自由だ。自由になったんだ」
平和を噛み締めながら、極上の一杯を啜る。しょっぱい。角砂糖を、ひとつふたつ…みっつ。
俺の自由と引き換えに、アルフレッドも自由になった。あいつには自由がよく似合う。心の向くままに、無邪気に、まっすぐに突き進むあいつが好きだった。あの瞳に好きだと告げられて、嬉しかった…。
鼻をかんで、紅茶を飲み干す。視界が歪んで仕方ない。季節はずれの花粉症かな。


「アーサー!」

カーテンの向こうから、大きな声。窓を開き視線を落とすと、アルフレッドが俺に両手を振っていた。
彼を大きく取り囲む歪なハート。足元には、くねくねと蛇行した「すきだよ」の文字。
トンボで均したグラウンドに、ラインカーで書かれたメッセージだった。

「アーサー!俺は、君に振られたって、諦めたりなんかしないんだぞ!だって、もう一度、好きだって言えばいいだけだからね!君がイエスと言うまで止めない。何度だってチャレンジするぞ!」

その告白は、放課後の校舎に、校庭に、響きわたった。吹奏楽部の練習音が止んで、なんだなんだと窓から顔を出す生徒、集まりだす部活動中の生徒たち。うわまじかよ、職員室の窓も開いたじゃねぇか。

なんだこれ、なんだこれ…!恥ずかしいヤツ!!
「ばっか!おま!恥ずかしい!!!待ってろ!そこを動くなよ!!!!」
生徒会室を飛び出して、階段を駆け下りる。熱くなった耳に、冷たい風が心地よかった。

グラウンドに降り立って、うち履きのまま一直線に駆け出す。
アルフレッドが泣き笑うような顔で、俺に向かって両腕を広げていた。


ん?その後、あいつとどうなったかって?
それはもう、貴女のご想像にお任せいたしますよ、レディ。
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2016/12/17

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