新婚旅行最終日の初夜のお話。
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想いを遂げ、一息ついた直樹が、体液を滴らせながら琴子の中を抜け出した。

「大丈夫か?」
「…ん、だいじょうぶ…」

直樹の問いかけに答えて、琴子は自分の声がひどく掠れていることに気づいた。
普段の発声とは全然違う、自分のものとは思えないような声が、行為の間中ずっと律動に合わせて喉から押し出されていたせいだ。
その時の自分の声が、仕草が、まるで動物のように野生じみていた気がして。
自分の身体に乗り上げて、必死に息を切らせていた直樹の様を思い出して。
琴子は急に恥ずかしくなった。

濡れたその場所をぬぐって、事後の処理をした後も、直樹はベッドサイドの灯りに照らされシーツに包まる琴子をじっと観察し続けている。
「まっくらにしてほしい」とさんざん頼んだにもかかわらず、結局直樹は最後までそれを叶えてくれなかった。
とはいえ光量はかなり絞られていたので、鳥目の琴子にはあまり見えない。
直樹は無言で琴子を見つめている。彼の目にははっきりと見えているのかもしれない。

「そんなに見ないでよ」
情事の余韻を残したままの直樹に、その雰囲気に耐えられなくなって、琴子はくるりとうつ伏せになると、積みあがったまくらの中に赤く火照った顔を埋めた。
直樹は無言で琴子が包まったシーツを剥がす。
なにも身に着けていない背中から臀部にかけて晒された琴子は、まくらに埋まった顔を更に赤くして、直樹の次の行動を息をひそめてじっと待っている。

直樹はその様子を熱の冷めない目で見つめながら、人差し指と中指の背を使い、琴子のうなじから背骨、尻の割れ目までを、羽が撫でるような柔らかなタッチで何度もなぞった。
砂時計のシルエットを描く腰から臀部にかけては、手のひらを使って柔らかさを確かめるようにやさしく捏ねる。

盛り上がる琴子の白い双丘を両手でつかんで直樹が尋ねた。
「ここ、噛んでもいい?」
いい?と聞きながら、そうさせろと強いるように、琴子が断れないと知っているかのように、直樹は強気な微笑を浮かべていた。
顔を上げないまま、恥ずかしそうに小さくうなずく琴子。
それを見届けた直樹は、果物にかぶりつくように大きく口を開けて、琴子の尻に甘く噛みついた。
「あっ…」
わずかな痛みと甘い疼き。
まくらに顔を埋めた琴子はきゅっと目をつぶってその感覚に耐えた。

「ふっ…歯型ついた」
口を離した直樹が、息を漏らして笑いながらその跡をなぞった。琴子は振り返って直樹を見つめる。
楽しそうだ。とても。

「入江くん、楽しい?」
「ああ」
本当に楽しそうにして、直樹は琴子の顔のそばまで伸びあがってきた。
背中から包むように琴子を抱きしめる。
いつになく無邪気な直樹の様子に、琴子の胸がきゅんと高鳴った。

「ずっと、やってみたかったんだ」
「ずっと?入江くん、ずっとこんなこと考えてたの?」
「まあね」
「信じられない!」
「そんなこと言われても。おれだって男だし」

本人からそう言われても、直樹がそういうことを考えていただなんて、琴子にはとても信じられない。
そんな問答をしている間にも、直樹は琴子を横向きに抱き起し、脇の間に差し込んだ手を琴子の胸や下腹部に這わせていた。
ぴちゃりと水音がたって、指先がそっと割れ目に到達したことを報せる。
「まだ、痛い?」
直樹の赤裸々な質問に、琴子はますます居た堪れなくなる。
「少し」
「だよな。出血もしてたし」

琴子の首筋に顔を埋めて、直樹は自分に言い聞かせるように言って、名残惜しそうに指先をそこから剥がした。
「じゃあ、続きはまた今度」
散らばったまくらを整え、自分たちの身体にシーツをかけ直して、直樹は琴子を背後から抱きしめたまま横になった。
「寝るの?」
「うん。おまえも疲れただろ」

琴子の耳から首筋にかけて、直樹の落ち着いた吐息がかかる。
ついさっきまでの、湿った息を熱く弾ませていたそれとは全然違う。

そのときの直樹は、普段のクールな様とはあまりにかけ離れすぎていて、あまりに非日常的すぎて、琴子は夢の中の出来事のように感じていた。
自分の上で汗を滴らせ、夢中になって打ち付けていた彼が愛しくてたまらなかった。
その感情はかっこよさに胸をときめかせるのとは違ったもので、これが、愛してるって気持ちなんだろうか、と琴子は思う。

それなら、もっともっと彼を愛したい。
何度もこうして抱き合いたい。
恥ずかしいから絶対に口にはしないけど、心からそう思う。

吹きかかる直樹の呼吸のリズムが、琴子の心を落ち着かせる。
おやすみなさい、入江くん。
とても満たされた気持ちで、琴子はそっと目を閉じた。
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2019/09/24

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